楕円曲線論はじめの一歩 (13)

今回のおはなし

みなさんこんにちは。

VIPPOOL でエンジニアをやっています、星月です。

前回は、楕円曲線上の有理点がなす群が、複素平面上の点と準同型な関係にある。
というお話をしました。
今回は、複素平面との関連性から、楕円曲線上の有理点がなす群の性質を探ってみましょう。

位数 3 の点

前回の話の復習になりますが、楕円曲線上の有理点がなす群で、位数が 3 の有理点に対応する点を
複素平面上に図示してみましょう。

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元々の平行四辺形の格子を、さらに 3 \times 3 に分割した点のいずれか。
その中の、とりあえず 1 つをピックアップしてみました。

この中の、どの点を選んでも、3 倍すると無限遠点に対応する、平行四辺形の頂点にたどり着くことが
確認できると思います。

複素平面上の格子の性質と楕円曲線の性質

今回は 3 \times 3 に分割しましたが、5 \times 5 に分割した場合は
必ず 5 倍すると無限遠点にたどり着きます。10 \times 10 なら 10 倍です。

複素平面上にある点は、必ず、その点で交差する n \times n の格子が存在するため、
どの点であっても、何倍かすれば必ず無限遠点に対応する点までたどり着けることになります。

また、楕円曲線上の有理点は、すべて複素平面上に対応する点があるため、
楕円曲線に戻って考えてみれば、

  1. 楕円曲線上の全ての有理点には、複素平面上に対応する点がある
  2. 複素平面上の全ての点は、平行四辺形をいくつかに区切った格子上にある
  3. 格子上にある点は、何倍かすれば平行四辺形の頂点に達する
  4. 平行四辺形の頂点は無限遠点に対応する

という4段を踏まえると、「楕円曲線上の有理点は何倍かすると無限遠点に達する」わけです。

無限遠点は、楕円曲線上の有理点のなす群の単位元でした。
何倍かすると単位元に戻る、ということは、最初の方でお話した時計の短針、あれと同じ構造なわけです。

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これは 12 倍すると単位元に戻る例でした。

ということはつまり、楕円曲線上の有理点のなす群は、有限巡回群であることがわかります。

言い換えれば、楕円曲線から有理点を 1 つ、適当に選び出すと、
その点を何度も足し続けると、いつかは無限遠点にたどり着くわけです。

まとめ

今回は、楕円曲線上の有理点のなす群は、実は有限巡回群だった、というお話でした。

今回はここまで。
ご質問、ご意見等ありましたらお気軽にリプライください。