楕円曲線論はじめの一歩 (7)

今回のおはなし

みなさんこんにちは。

VIPPOOL でエンジニアをやっています、星月です。

前回は「他にどんなものが『体』となるか?」から「有限体」について語りました。
今回はもう 1 つ、「体」となるものを紹介しようと思います。

数直線

みなさん「数直線」って覚えていますか?

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直線上の点を実数に対応させて図にするアレです。

例えば、3 はここです。

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これを使うと、数値が視覚的に見れて便利、という優れものです。

数直線上に存在しない点

さて、ここでとある方程式を持ってきます。

x^2+1=0

この左辺には、最小多項式、原始多項式という名前がついていますが、
今は覚えなくても大丈夫です。

この方程式の解となる値はどこでしょう?

二次方程式の判別式を覚えている方はすぐにわかると思いますが、
この方程式には実数の解は「存在しません」。

そのため、数直線上の点には対応しません。

でももし仮にそんな値が存在するとしたら?と考えると、いろいろ面白いことがわかります。
それが、「拡大体」という概念への入り口となります。

とりあえず方程式の解が存在するとして、数直線の図に、無理やり点を作りましょう。
数直線上は全部実数に対応しているので、
その外に、対応する点をおきます。0 の真上が都合がいいので、そこにおきます。

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そんな適当においていいの?と思われそうですが、
重要なのは 0~1 を結ぶ直線と、0~解 を結ぶ直線とが
「0 で直交しているところ」がポイントです。

これにより、ユークリッド幾何学の概念を取り込むことができるから便利なのですが、
今はそこに詳しく触れる必要は特にないので、忘れてしまっても大丈夫です。

呼び方がないと不便なので、「虚数単位」「i」と呼びます。
電気回路を扱う人は、電流 i と見分けをつけるためにあえて j と呼んでいるようですが、
ここは数学の人たちの流儀に合わせて i を使っていきます。

数直線から複素平面

さて、今、実数と対応付けられた数直線1本と、虚数単位の点があります。

新しく加わった虚数単位 i と、いろいろな実数 x, y を使って
x+yi で表すことのできる値を「複素数」と呼びますが、
その複素数全体のそれぞれに対応する点はどこでしょう?

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この図の水色で表した「平面」全体が複素数全体のそれぞれに対応付けられる点となります。
これが複素平面、別名、ガウス平面です。

逆に見れば、この平面内のどの点も、虚数単位 i と実数 x, y を使って
x+yi で表すことができる複素数と対応付けられています。

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例えば、3+2i はここの点と対応づけられます。

存在しない値を追加して線を面にする

数直線から複素平面を作ったように、元々実数として含まれていなかったはずの点を
追加することで面を作る。ということができます。

実数は元々「体」ですが、こうやって作った x+yi の集合、複素数も、「体」となります。

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この新しく作った体を「拡大体」と呼び、今回のように、実数に x^2+1=0 の解を追加して
作った拡大体を特別に「複素数体」と呼んでいます。

複素数の足し算と複素平面

複素数は実は「体」の用件を満たす、ということは足し算ができます。
(3+2i)+(2+2i)=5+4i

これを複素平面で見てみましょう。

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このように、0 の点(原点)からの矢印をつなげていくことで、
複素数の足し算ができます。

小学校で数直線を習ったとき、数直線での足し算、やりましたよね?
それと同じことができるという話です。

まとめ

解の存在しない方程式を用意して、その解が仮に存在することとして追加することで、
1次元だった数直線を平面に拡大する、というやり方です。

既知の体から、拡大体を作る方法についてお話しました。
そしてその一例が、複素数体となります。

今回はここまで。
ご質問、ご意見等ありましたらお気軽にリプライください。