楕円曲線論はじめの一歩 (3)

今回のおはなし

みなさんこんにちは。

VIPPOOL でエンジニアをやっています、星月です。

前回は「足し算」とは何か。つまり「群」について語りました。
今回は、「モノの個数」以外にも「群」の条件を満たすものがあるので、
それについて見ていきましょう。

時計の短針、実は群

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これは 1 時間に 1 つずつ進んでいく時計の時針です。

モノの個数ではないですが、これも実は群の条件を満たしています。
1 つずつ確認してみましょう。

演算に対して閉じている

1 時から 1 時間経つと 2 時。
3 時から 4 時間経つと 7 時。
8 時から 6 時間経つと 14 時...かと思いきや 2 時。

ちゃんと演算に対して閉じていますね。

結合法則

1 時から 2 時間経って、さらに 3 時間経つと 6 時。
2 時間と 3 時間、あわせて 5 時間が 1 時から経過すると 6 時。

ちゃんと成り立ちますね。

単位元

0 時から n 時間経てば n 時。
n 時から 0 時間経っても n 時。

間違いなく単位元です。

逆元

3 時の 3 時間前は 0 時。
5 時の 5 時間前も 0 時。

逆元はきちんと存在しています。

記号の世界の言葉で説明してみる

今の短針の位置、つまり 0 時からの経過時間を x、追加する経過時間を y としましょう。
この時計の短針の位置は (x + y) \bmod 12 で計算できます。
mod は剰余、つまり「あまり」のことで、x と y を足して、12 で割ったあまりが、
新しい短針の位置になります。

このように、ぐるっと回って元に戻る構造をしている群のことを「巡回群」と呼び、
特に「巡回群」の要素となっている元の個数が有限であるもののことを「有限巡回群」と呼びます。

数学の世界では、12 個の要素からなっている有限巡回群\mathbb{Z}/12\mathbb{Z} と書いたりします。

まとめ

モノの個数以外にも、群の条件を満たすものがあり、
その一例を見てみました。

今回はここまで。
ご質問、ご意見等ありましたらお気軽にリプライください。