楕円曲線論はじめの一歩 (9)

今回のおはなし

みなさんこんにちは。

VIPPOOL でエンジニアをやっています、星月です。

前回、「楕円曲線に交わるように直線を引くと、その直線は必ず 3 箇所で交わります」と書きましたが、
実際には例外があります。

今回はその例外について見ていきましょう。

楕円曲線と接する場合

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楕円曲線に直線を重ねると、この図のように接線となる場合があります。
その場合は、2 点でしか交わりません。

このような場合は、3 点で交わっている状態から連続的に変化させていき、その極限を考えます。

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P-P'-Q の直線は 3 点で交わっています。
これを少しずつ、Q の位置を変えずに上にずらしていきます。

すると、P と P' はどんどん近づいていって、あるとき P'' の 1 点に集約されます。

つまり、接線となっている点は、その点で 2 回、交わってる状態と「連続」しているわけです。
要するに、接線の部分で 2 回交わっているとカウントするわけですね。

中学校で二次方程式の解を求める時に、「重解は 2 回交わっているものとみなす」と習いました。
あれと同じです。

数式で考えるともう少し明白です。

前回、2 点 P = ( x1, y1 ) と Q = ( x2, y2 ) から有理点 S を求める式をお見せしました。

x_3=(\frac{y_2-y_1}{x_2-x_1})^2-x_1-x_2
y_3=\frac{y_2-y_1}{x_2-x_1}(x_1-x_3)-y_1

ここで、\lim_{x_2 \to x_1} を考えます。
x2 が変化すると y2 もあわせて変化していくことに注意して極限を求めると、

x_3=(\frac{3x_1^2+a}{2y_1})^2-2x_1
y_3=\frac{3x_1^2+a}{2y_1}(x_1-x_3)-y_1

が得られます。今回も詳細な計算は省略します。

式の形はだいぶ違いますが、傾きを表している

\frac{y_2-y_1}{x_2-x_1}

が、

\frac{3x_1^2+a}{2y_1}

に変わっているだけです。

直線を連続的に移動させて点 P と点 P' が極限まで近づいて点 P'' になる。
これを数式で考えるとこうなる、というお話です。

接する場合を考えると何ができるか

さて、以上の考え方を逆にすれば、
楕円曲線上に有理点が 1 個があれば、そこに接線を引くことで別の有理点が見つかる」
ということになります。

P と P' から S を発見できるのであれば、P'' と P'' からも S を発見できるというわけです。

前回は有理点が 2 個から別の点を見つけましたが、実は 1 個でもあれば見つけられる、
というお話です。

まとめ

今回は、楕円曲線と直線が 3 点で交わらないケースについて見てみました。
実はもう 1 パターンあるのですが、それについては次回、触れることにしましょう。

今回はここまで。
ご質問、ご意見等ありましたらお気軽にリプライください。