今回のおはなし
みなさんこんにちは。
VIPPOOL でエンジニアをやっています、星月です。
前回まで、ずっと足し算の話をしてきました。
じゃあ、掛け算と割り算はどうなんでしょう?というのが今回のテーマです。
「掛け算(割り算)」と呼んでもいい条件
掛け算ついても、過去の偉い人たちが散々検討を重ねた結果、
「これを満たせば『掛け算』と呼んで差し支えないだろう」
という条件が決まっています。
「足し算」が存在する
掛け算というのは、それ単体で存在するものではなく、
足し算がある上に、さらに追加の演算として存在するものである。
というわけです。つまり、足し算ができる上で、さらに追加で別の演算ができるときに、
その追加の演算を「掛け算」と呼ぶわけです。
足し算は可換群の性質を持つ
「可換」とは、「左と右を入れ替えても結果が変わらない」という性質のことです。
1 + 2 = 2 + 1
つまり、足し算が群であるだけでなく、
追加で「左と右を入れ替えても同じ結果になる」という性質を備えている必要があります。
掛け算は 0 以外に対して可換群の性質を持つ
ここまでは、要するに「掛け算が存在するためには『足し算』が要る。それは可換群である。」という話でした。
掛け算の本質はここからです。
足し算の可換群の元から 0 を除くと、掛け算に対しても可換群の性質を持ちます。
つまり、こういうことです。
「群」とは足し算を抽象化したものである。と説明してきましたが、
実は掛け算も、本質的な性質としては、似たようなものとして説明できてしまうわけです。
これ、結構面白くないですか?
足し算と異なるのは、0 を含まないという点と、つながっている順番(構造)が
異なるというところだけです。
つまり、足し算ができて、足し算とは構造の違う演算がもう一種類定義されたとき、
それを掛け算と呼んでいるわけです。
「分配法則」が成り立つ
これは小学校で習いましたね。
ということです。
具体例で見てみましょう
抽象的に説明してもピンと来ないと思うので、
具体的に、「実数」に対して考えてみましょう。
まず、実数には和と積、2種類の演算ができます。
次に、和については、可換群の要素を満たしています。
- 実数と実数の和は実数 → 演算について閉じている
- 和の順序を入れ替えても結果は同じ → 結合法則を満たす
- 0 をいくら足しても結果は同じ → 単位元(零元)は 0
- マイナスをつけた数との和は 0 → 逆元(マイナス元)が存在する
- 和の左右を入れ替えても結果は同じ → 可換である
なお、掛け算の「単位元」「逆元」と混同しないように、
足し算の群の方は「零元」「マイナス元」と呼んだりします。
さらに、積についても、0 を除けば可換群の性質を満たします。
- 実数と実数の積は実数 → 演算について閉じている
- 積の順序を入れ替えても結果は同じ → 結合法則を満たす
- 1 をいくらかけても結果は同じ → 単位元は 1
- 逆数をかけると 1 になる → 逆元が存在する
- 積の左右を入れ替えても結果は同じ → 可換である
0 の掛け算に関しては、結合法則を満たすし、可換でありますね。
あとは、小学校で習ったとおり、分配法則も満たします。
以上から、実数は全ての条件を満たしていることがわかります。
つまり、これらの条件は、実数に対する和と積から、
極限まで具体性をそぎ落とした、「和と積についての本質的な性質」といえるわけです。
この、「和と積についての本質的な性質」を満たすもののことを「体」と呼びます。
まとめ
掛け算とは、足し算ができる上で、さらに別の演算が定義されている場合に、
それが特定の条件を満たしている場合の呼び名である、というお話でした。
そしてそれは、実数のように、普通に四則演算に使っているものから、
具体性を極限までそぎ落とした、「四則演算の本質」であるということでした。
今回はここまで。
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